Joker: Folie à Deux 感想 (ネタバレあり!!!!!!!!!!!!!!!!!!)
(ヒットした)映画の続編には2パターンあるとおもっていて、前作のオモロかった、ウケがよかった部分を拡大再生産するタイプの続編と、前作とは全く違うアプローチで全く違うモノを作らんとするタイプの続編で、本作はまぎれもなく後者だとおもった
わかりやすいところだと、
マトリックス レザレクションズは後者の代表格で、違うものを作ろうとするあまり、旧シリーズを全否定するような仕上がりになっていて、正直あんまり受け入れられず、オリジナルを見返したりしている
恐らく作り手の意図するところではないのかもしれないが....
本国では数ヶ月前に封切られていて、やや評判が芳しくないのは薄々勘づいてはいたので、なんなら公開日に劇場へ行くのも忘れていたレベルだったのだが、正直それを後悔するぐらいブッ刺さった
前作はすごい好きってわけでもないのだが、京王線で模倣犯が登場した際に慄いて盤を買っておく程度には年月を経て愛着をもっている
そういう、付かず離れずぐらいの距離感の自分にとって前作で築き上げた
アーサー・フレック像を
ハーリーン・クインゼルによってブチ壊すっていう構造の本作はもう今年ベストとか、前作は本作のためにあったんや!! とか、生涯ベストとか、もうそういう筆舌に尽くしがたいぐらいこの仕掛けが刺さった
なんとなく、本作で裁判所の外でジョーカーの仮装でやいのやいのやってる連中は、前作を神格化している連中なのかなーとちょっとおもった
刑務所でサインを求めてくる奴に「Put on...」と決まり文句のサインをしようとするのに「コイツが(死刑になって)丸焦げになったら価値が出るだろ」っていう刑務官に「ガンになって死ね」ってサインしてたりとかね
トッド・フィリップスことジョーカーもとい、アーサー・フレックのアンサーは「ジョーカーとしてステージに立つ」んじゃなくて「5人じゃなくて6人殺しました....」なんだと受け止めた
そのトッド・フィリップスのスタンスがまず1億点!!!
そして、なんと言っても
レディ・ガガのハーリーンがマジに最高だった
ここ数年は、実写において
マーゴット・ロビー様のお陰で非常にポップな
ハーレイ・クイン像を作り上げてくれていて、これに関しては本当に感謝しているのだけど、ロビーのハーレイはハーレイなのであってハーリーンではないのだよなあ、というモヤモヤをずっと抱えていた
出自的に(時代的に)
DVチックなカレシにゾッコンなメンヘラ女的な描かれ方だったのが、社会や世界がアップデートされていくにつれてキャラクターが設定を超克していったというのがここ10年くらいのコミックでのハーレイだとおもっていて、そこをうま〜く切り取ってくれたのがロビーなのであったのだが、その切り取りから漏れていた部分をガガがすくい取ってくれた!! という感動があった
ジョーカーへの偏愛っぷりはそのままに、被害者的な立場ではなく、糸を引いているのは自分、ぐらいの勢いなのが現代のハーリーンだな、と
実写ではうやむやにしていた、ジョーカーとの決別をしっかりと描いてみせてくれたあたりもサイコーだった
歌と音楽が印象的だが、コミックでは歌や音楽の表現には限界があるわけで、そういう意味でこのメディアでしかやれない
ジョーカーとハーリーンを描いてみせてくれたというだけでもう独りスタンディングオベーション
ガガの配役も完璧で、この役をやれるのはこの人しかいねえのでは、という説得力でとてもよかった
...で、これはもうちょっとした自分の好みというか、ある種の性癖みたいなものなのだが、主人公が破滅する物語が好きで(
ナイトメア・アリーとか)、さらに
ファム・ファタルに狂わされて破滅する物語が至上なのである
そういう意味で、終盤の例の階段でハーリーンと邂逅して「歌わないでくれ....話そう.....歌わないで....」ってやるシーンはもう垂涎オブ垂涎
このシーンだけでもう全てが許せるっていうか、もうこのシーンのために前作と本作ここまでみてきたんだな....ってぐらいには満足した
正直、ほぼ全体が法廷もの+刑務所もので、前作ほどのドライブ感はなくて「ははあ、これは賛否が割れるのもさもありなん...」ぐらいの目でみてたのだが、爆発の後、例の階段に着いて、ハーリーンがいた時はもうその後の破滅を予感させすぎて漏らしそうだった
あと、囚人たちが揃ってるシーンで明らかにアーサーを見る目が違う奴がいて「あっ...こいつに母屋乗っ取りされんだな....」とのっけからよからぬ気配があったのもよかったな〜
爆発で
トゥーフェイスになっちゃったりするのかな?とか妄想したりしてしまった