Babygirl 感想 (ネタバレあり)
個人的に、一番好きな映画の入り方は信頼できるスジから「いいから黙ってこれをみにいけ」をされて予告もみず、あらすじも読まず劇場入りするパターンのやつなのだが、今回そのパターン
………なのだが、妻に「レイトで映画いくんだけどもー」と話したら「じゃあ、いこかな」つーことで、2人して臨むことに
したら、いきなり濡れ場からはじまって「
(500)日のサマー」の次コレに連れてくる配偶者大丈夫か!?!?!と冒頭から頭を抱えていたのだが、終わってみたら「いや〜
フィフティ・シェイズ・オブ・グレイの上位互換だったな〜」と満足そうにしていたので.....結果オーライか....(?)
今一番信頼できる配給は
A24 と
サーチライトなので、A24 のロゴが出た時はガッツポーズと同時に「ハメられた!!!!(いい意味で)」となった
全体的にとにかく居心地の悪い映画で、のっけの濡れ場の後すぐセルフプレジャーしにいくシーンになり、これはこれで気まずいセルフプレジャーシーンで、明らかにソレっぽい動画でいたしているのがなんともいえず........
後から分かるコトだけど、夫とヤってる時のエクスタシーと、セルフプレジャーの時のエクスタシーと、服従状態のエクスタシーとで演じ分けられるこの人スゲー!.....っておもってたらエンドクレジットで
ニコール・キッドマンてことがわかり、いやはや A24 といえば
ミア・ゴスみたいな印象がややあるが、キャスティングがすげえね
シモはそうだったとしても、ソトでは取り繕ってるのが人間ってモンで、タイトルがバーンと出たらこの人はテック企業の社長だということがわかる
自分としては色欲に負けた人間は破滅してほしいので(←?) はいはい「子供たちがホームレスに靴をやっていた」って話はフリで、実はサミュエルは何らか因縁のある人の隠し子か何かで、全ては仕組まれていたことだったのだ〜的な感じで全てを失って、ホームレスしてるところに通りがかりの優しい人に靴をもらったらなんと自分の子供で気まずい再会になってしまう〜〜....オチまで予測してたんだけど全然裏切られた
通勤途中で犬を宥めてた男が実は自分の会社で働くインターン生だったことが判明し、
ファムファタル(の逆ってなんだ....?)的にロミーの素質を見抜き、絡んでくるようになり〜という
なんでかわからんけど子供の仲介もあってか(?)夫との復縁には成功するし、絶対なんかワケアリだったんだろ!!みたいなジジイに啖呵を切って「スッキリしたぜ〜」みたいになって終わりだったんだけど.......それでよかったん??
サミュエル役の
ハリス・ディキンソンもかなり良くて、なんかこう絶妙にうだつのあがらない感じに見えて、妙にグイグイくる瞬間もあれば「ハイ!傷つきました〜〜!」とロミーの前から去ろうとしたり、まあなんかハマってしまうのはわからいでもないんだけど.....
子供たちからしてみたらいい歳こいてそんなクズにかき乱されてんじゃねーよ!! となっちまいそうなもんだが、ツラに注射してることには不満タラタラだったイザベルは見かねてなのか優しくしてくれるし、まあイザベルもイザベルでイザコザがあったらしいことがやんわり分かるし、そこら辺で心境の変化もあったのかもしれない
ところで、ディキンソンは
サム・メンデスの
ビートルズの4部作(4部作!?!?)で
ジョン・レノンを演じるらしくて、レノンみがあるのかどうかは分からんが、シンプルにサム・メンデス新作キタ〜〜〜〜てなって盛り上がった
もひとつスパイスなのがエズメで「あんたのやってること、知ってるけど別にあんたを追い落とすことに興味はないから」といって黙って昇進してんのって、なんか....どうなん??
めちゃくちゃ意地の悪い演出があって、エズメがいかにもリベラル風味なロミーを称える演説をぶってるカットバックで散々犬....獣....じみた痴態をみせられてきた本人が映されるという
しかし、なんとなく本作の根幹にあるテーマとして、人間はやっぱり多面的な生き物で、本作では性欲だったけど、性欲に限らず全てにおいて本音と建前があるというかなんというか
我とて、愛玩動物を愛でる気持ちはあるし、車を運転してて動物が飛び出してきたら基本的には急ブレーキを踏むなりハンドルを切るなりする(事故らない範囲で)わけだが、もう一方では当たり前のようにチャーシューは食べるし、ソーセージは食べてるわけで、それをして「君は矛盾した状態なんですね?」と問われると正直何の反論もできない
例えば宗教上、思想上、信条上「何かを食べない」ということを理性でもって制御できているのって本当にスゴいな〜と.....
性愛に関しては、それが対ヒトになるのが難しいところで、そりゃまあ建前としては本作のジェイコブみたいに「女性のマゾ性愛なんつーのはオトコの空想上の概念だよ」とニッコリ説くことができるが、他方で己の中のサミュエルが「いや〜〜〜支配欲のある人間が服従する瞬間って、ゾクゾクしますよねえ!!」と首をもたげてくるのを全否定するのもなんか違うよナ〜.....みたいな......
なんといってもこちとら多感な時期に
江戸川乱歩に散々イジられてるので.....
物質的に起きてることはただ動物と動物がまぐわってるだけなんだけども、そしてそれは自然界では当たり前のように起きていることなんだけども、それがこのヒトという共通の空想を抱いていると思い込んでるだけの生き物の個体としては「共通の空想を抱いている」という空想が砕ける瞬間というのが破滅的で(本作でいう、ロミーが「結婚19年、テメーとでオーガズムに達したことがないんだわ」と癇癪を起こすシーン)、それでいて「この人とは共通の空想を抱いている」と肉体的に理解した瞬間のロマンチックさみたいなのの両面があって、そのせめぎあいの中で生きてるんだよなあ........
だから、物質的に起きていることだけを捉えたらなんでもねーのだけど、しょーもない人間なので「じゃあコレが男女逆だったら鑑賞に耐うるのか?」みたいな問いを立てて、インナージェイコブが「いやあ.....ジジイがファムファタルに狂わされるハナシはまあ好きだけども、社長のジジイとインターンの若いオンナって構図の時点でもうキチィ」と演説をぶつんだけど、インナーサミュエルが「コイツにだったら全てを擲ってもイイみたいな相手にグチャグチャにされてボロ雑巾のように捨てられてェ〜〜〜だろ!!」とプラカードを掲げて対抗する感じで.....
パンフ読んでみると(装丁が悪趣味で最高!!)
バーホーベンの影響を受けてるって話にかなり「なるほど!!」となった
あと、監督のインタビューで↑に書いたような結末は退屈でつまんねえと一蹴されてしまい「そ、そうっすか....」と.....
キッドマンめちゃハマり役だなあ、というのもそれはそうでそもそもアテ書きだったっていうね