時空旅行者の砂時計 Audible 版 感想 (ネタバレあり)
序文からして、読者に挑戦的というか、メタ的にこれが推理小説であることを意識させるつくりになっていたので、全ての事象に対していちいち「それはこういう可能性が考えれる、こいつは怪しい」とウンウン考えながら聴き進めることができて大変愉しかった
マイスター・ホラという名前はなんだったっけなとおもったが、
モモからの引用だと早々に作中で語られるが「ホラ」という名が法螺吹きのホラのダブルミーニングなんじゃないかと割と最後までうたぐっていたが...エピローグからどう受け止めるべきかはグラデーションがあるような気がする
耳で聞くだけなので、最初は誰が誰やらと舞台となる別荘もどういう構造なのかってのが把握しづらかったが、適宜作中で補足してくれるのも助かって中盤くらいにはだいたいの家系図と見取り図が脳内に出来上がっていていろいろな可能性を検証できていた
また、何が解くべき謎なのかという部分も適切なタイミングで改めて説明してくれるので助かった
タイムスリップの設定まわりはなかなかにクレイジーで、未来の科学者間の対立が時空を超えて過去に持ち込まれるという構造は
フラッシュなどの
アメコミの展開を彷彿とさせる
テンプレな探偵小説では、探偵は確白の存在として振る舞えるので読者もそれにのっかっていけるわけだが、本作ではカモは未来から過去に潜入せねばならず、いろいろな帳尻を合わせるために
Among Us や
アヴァロンばりに嘘も交えながら振る舞わねばならず、そこもひとひねりあって面白かった
のっけから血筋の怪しい雨宮を疑っており、終盤でゲンジか雨宮かまで絞り込まれた時点で雨宮だろーなーと読みながら聞いていた
妙にキノコの話がでるのが怪しいとおもっていたし、エイタロウが中毒死っぽい死因だったので怪しいとはおもっていたが、まさかツキヒコとツキエの仕業だったとは想定外だった
そしてその後リンチ殺人があったというのもこういう田舎一族ものの定番というかなんというか...人間はどこまで残忍になれるのか
キャンピングカーが動いていたというのは確実にタイムスリップしていたと読んではいたのだが、その時間がいかほどだったのかというのはアヤカ同様に謎だったが、24h転送したというのはなかなかクレバーだったなと
ヒゲでバレる展開があったが、ヒゲは剃るんではなくハサミで切るだけにしておけばよりバレにくかったのでは、とおもわんでもなかった、まあ大勢に影響はなさそうだが
唯一不憫だったのは改変後世界のレナで、このレナは改変前のレナと時空的な同一性はないはずなのだから、ここまで物語を共にしてきた我々ならさほど違和感はないわけだけど、親族にこんな突拍子もない話をしている奴がいたら引くとおもう
まあそこはゲンジもツキエもいるわけなので、3人がかりでがんばったんだろうけど、改変後レナにしてみれば許嫁を指定されるようなもんで真に楽しい人生だったのか疑問である
あとおもったのは、ツキエが犯行を自白した時点でホラを使ってエイタロウ殺害のタイミングまでジャンプすれば諸悪の根源を断つことができ、雨宮も曲がった人生を送らずに済んだのではとおもわんでもなかった