クックパッドがハチミツを利用した離乳食レシピや、豚ユッケを掲載していた件で、批判を集めている。CGM(Consumer Generated Media)やウェブ2.0なんて言葉が死語に近付きつつある中、こうしたCGMサービス、Web 2.0企業に対する逆風が今になって強まっているのは偶然だろうか。 一番の例は、Naverまとめだろう。Naverまとめは誰でも投稿できるCGMプラットフォームだが、他者の著作物を転載、再利用したコンテンツが散見されながら、プラットフォーム側はその対応を十分に行っていないと言われている。無断転載はブログ時代にもあったことで、CGMと無法者の関係は今にはじまったことではない。しかし、これまでその矛先はブログ著者など個人に向かうことが多かった。今や批判は「まとめ主」など投稿者よりも、プラットフォーム側へ移りつつあるようだ。 似たような例として、海外でのYouTube騒動も挙げられる。こちらの問題は、一部の政治的なコンテンツ、いわゆるヘイト動画に、広告が掲載されてしまうことだ。広告収益が投稿者にも還元されるため、ヘイトを配信することにインセンティブが発生してしまうし、広告主としてはヘイト動画を支援しているように見られてしまう。そもそもはそんな動画を投稿するのがいけない、という意見もあるだろうが、そうした批判はもはや今更ということなのか、矛先はプラットフォームであるYouTubeへと向かっている。 なぜプラットフォームにこのような批判が集まるのだろうか。矛盾するかもしれないが、一つにはプラットフォームが強くなりすぎたのだろう。ひどい投稿への文句は投稿主へ、その収益は原則プラットフォームへ、という米国のDMCA、日本のプロパイダ制限責任法のありかたは、プラットフォーム企業が大きな収益を上げる今となっては、あまりに企業へ有利に見えてしまう。あの企業はパクリコンテンツ、ヘイトコンテンツで儲けている! という声は極端ではあるが、完全に間違っているわけでもない。 しかし、それ以上に感じるのは、CGMもそれなりの歴史を経て、多くのネットユーザが「自分たちのプラットフォーム」と捉えづらくなっているのでは、ということだ。ブロガーも、まとめ主も、クックパッドの投稿者も、自分以外の「他人」で、そうした他人の、少なくとも一部が質の低いコンテンツを作り、検索結果を占拠し、中にはお金まで貰っておいて、まわりに迷惑をかけている……それが平均的なネットユーザにとってのCGMの現在なのではないか。 有名ブロガー、YouTuber、インフルエンサーなど、CGMを駆使するセミプロフェッショナル層が一般化したため、本当の一般層と乖離し、一般にCGMはもはや投稿する場所ではなく、ただ見る場所と捉えられるようになったのも、背景にあるのかもしれない。 ウェブ2.0が生まれ、CGMが持ち上げられていたときは、もっと明るい未来が約束されていたはずだった。これまでマスメディアだけが保有していた情報発信の力が一般人に開放され、ネットユーザに声が与えられることで多様な知識がオンラインに集まり、そこから集合知が生まれる……そう喧伝されていたものだ。 それなのに、結局のところ平均的なネットユーザは、Twitterで呟く以上の情報を発信しないままである。いまや集合知など誰も信じない。情報発信をしているのはごく一部で、それも金儲けのためが大半で、そのためにはヘイトでも炎上でもなんでもやる……そういう例が目立ってしまう状態が、CGMの顛末なのかもしれない。 もっとも、どんなコミュニティも常連ユーザが生まれ、その反対に新規層がアクティブに活動できないと、そうした停滞感は生まれてくる。そう考えると、本当の問題はウェブ2.0が嫌われていることよりも、ウェブ3.0が来なかったことなのだろう。