ザ・メニュー 感想 (いろいろなネタバレがあるので注意)

ザ・メニュー 感想 (いろいろなネタバレがあるので注意)
核心的なネタバレの話からしてしまうんだけど、ラストの展開からどうしてもミッドサマーを連想してしまった
構造も似ていて、ミッドサマーでは価値観の違うコミュニティに外部の人間が剥き出しの好奇心でもって土足でズカズカやってくるという話だったが、この映画では孤島の料理店(クローズドサークルの典型みたいな設定だ)がある種の新興宗教みたいなコミュニティを形成していて、そこへやってくる客というのはミッドサマーのあいつらと重なる部分がある
プレッシャー・クッカーをみた後でこの映画をみるとリアリティがハンパない。プレッシャー〜の出演者を指してどうこう言いたいわけではないけれど、番組内でずっと内ゲバしてたみたいな感じだったし、あれの極として「ん〜、最後にみんな死ぬってのはどう!?」「いいね!その発想はなかったわ〜」って盛り上がっててもおかしくない雰囲気があったというか
業種に依らずどの産業でもこういう残酷さは内包しているのかもしれないけど、料理ってのはプリミティブな「食う」ための行為なので、よっぽどロイヤルな存在でなければ、なんらかの形で「作る」ことに接しないまま生きてくるのは無理.....だとおもうんだけど
プリミティブな行為なだけに晒されている競争もとんでもないものであることは容易に想像がつく
普段何気なく「あの店はうまいまずい」と書き散らしたり内々で話したりするけど、その連鎖の先に、うまくいった方は「うまいチーズバーガーを作る楽しみ」を忘れてしまい、うまくいかなかった方もまた「ただうまいメシを食ってほしかった」を満たせず斃れていくわけで
最後にみんな衣装を着せられて焼かれるのは笑った
一方で、ファイナルガールの扱いは180度違ったと言っていいとおもった
ミッドサマーでは「こちらの世界」の因習に囚われていた主人公がある種開放される映画だったとおもっている
この映画では、アニャ・テイラー=ジョイ演じるマーゴは客たちの中では異物とも言える存在で、だからこそレセプションで「は?」ってなってたのもそらそうかとおもうし、シェフが執拗に固執するのも今となってはわかるというか
マーゴはシェフから奪う側なのか、与える側、つまりは搾取されている側なのかと問われる
性産業で働いているという彼女もまた搾取される存在ではあるが、どちらの側か揺れるというのが軸
この映画のアンサーは、シンプルなギブアンドテイクの食産業であってほしいということなのかなあとおもった
何十万と払うからといって作り手側に献身を強いるのはおかしいとおもうし、その上で奔放に批評していいのかと
ただ、ここで滑稽なのは別に料理に限った話ではなくて、ここでこうやってこの映画についてぐだぐだ書いてるのも、この映画に出てくる評論家の人だったり、ニコラス・ホルト演じるタイラーと同じことを無邪気にやっているのに重なる
クレジットみるまでニコラス・ホルトだって気付かなかった、相変わらず狂信者がうまい人だ....(イモータン・ジョーを思い返しながら)
あーだこーだ書いてるけど「はい!じゃあここにカメラもあるし、スタッフもいるし、演者もいるんで!なんか撮りましょ!」ってなっても劇中のタイラーの無様な料理のように(まあもうちょっと焼き加減なんとかすれば別にまあうまいんじゃね?とはおもわんでもなかったが)クソなフィルムができるだけなんだろう
M-1みてても「選ばれなかった人」たちに想いを馳せずにはいられなかった、出てる人たちにどうこう言いたいわけじゃないけど、あそこの審査員たちの点数を稼ぐために漫才やってるんですか....?みたいな.....
でもお笑いで売れようとおもったらある程度そういう馴れ合い....というと言い方が悪いかもしれないけど、の中でやっていくしかないってのと同様に、料理でも売れよう(食ってこう)とおもったらある程度そういう批評の相手をしないといけないんだろうな...と
取材お断りみたいな店とかもあるのは知ってるけど、それはそれでまた神秘性を高めるみたいな感じになってて、そういう売り方なんでは....みたいな勘繰りもしてしまう
ステージがあって、センターマイクがあって、客がいて、笑って、それでいいじゃないですか、というのがこの映画の言わんとすることなんかな....的な.....
マーゴは saw のゴードン先生だったり、アマンダに近いのかなとちょっとおもった
saw では思想が引き継がれたと感じたけど、この映画では「通じ合った」感じがした。シェフの求める客だったというか....。注文の多い料理店みたいだが
ところで、マスターマインドがちゃんと先頭に立って陣頭指揮を執ってるのはやっぱり良い。ジョン・クレイマーもそうだけど、ムカデ人間のハイター博士とか
チーズバーガーのくだりは、自分も「ラーメン小、950円で。はい、ごっそさんでした」というのが好きなので心の底からそうだねっておもってます
終盤らへんで、シェフは「お前たちは本気で抵抗したか...?」と問いかけるところはくるものがあって、超少子高齢化社会を迎えようとしているこの国で、俺は本気で抵抗しているんだろうか...?ある意味でシェフの料理を泣きながら食ってるだけの小悪党たちと似たようなもんなんじゃないかと