たそがれの朝食 ( Audible 版) 感想 (ネタバレあり)

たそがれの朝食 (Audible 版) 感想 (ネタバレあり)
時代を感じる、冷戦期にうっかり未来にタイムスリップしてしまったでござるの話だった
妻が夫を試すように未来で見聞きしたことを基に、リスクをとって本当に過去に戻るのか?と問いただしてくるあたりはやや訓話的だなあ、とおもった
しかし、未来の政治局の男は「いつはじまったかって?気付かないフリをしてただけであちこちではじまってたのさ」ってのは2024年の視点からするとかなり示唆的だなあと
いま、あちこちであがっている火の手は「いつから?」といった時に911から語る人がいたり、ソ連の崩壊から語る人がいたり、いろんな切り口があるとおもうけど、昨日今日ではじまったことではないんだよなあと
例えば明日目が覚めたら核戦争がはじまってたとしても、明日はじまったことだとはおもわないだろう
そして、当然のようにオチもビターで「ハハハ、給湯器の故障さ」と話を濁す夫に自分を重ねてしまってつらくなった
何度となく核兵器のボタンを自分とは異なる論理で生きているヒトが握っているという現実に押し潰されそうになってきた....というか押し潰れている、そんな自分をディックに言い当てられているようでなんとも居心地の悪い読了であった